海
ここまで読んでくれた人はきっと、いくらか人生に迷いがあるのではないですか。
いえ、人生に迷いがない人なんて、いないのかもしれません。
そんな迷える子羊のあなた、あるいは迷えぬ闘牛のあなたも、大海原の抱擁に身を任せてみてはいかかですか。
その大海原というのはどこにあるのかというと、甲南大学10号館8階の…その…ちょっと行ったところの右手に広がっています。そこに、静かなる岩のごとく、底の見えぬ井戸のごとく、果てない学びのごとく、来るもの拒まず去るもの追わずの、母なる大海があります。
しかし、きちんと入水する日時を予め告げておかなければなりません。潮の満ち引きは、海のみぞ知るということです。あなたが正確な日時を決めて海にアポイントメントを取っておけば、海はあなたが海に入りやすいように、波の高さなどを調節してくれることでしょう。
ちなみに前回私が大海原に訪れたのは、とある金曜日、16時30分頃のことです。その日私は早朝から人生の迷路に迷い込み、電車の中で「キャバ嬢 年収」「甲南 大学院 学費」などと検索をかけては自分の愚行にため息をつき、一日中現実逃避をして目の前の苦しみから逃れようとしていました。そして放課後、人がうじゃうじゃと行き交うなかで一人歩いていると、どことなく孤独を感じて、気づけば勢いのままに大海原にアポイントメントを取っていました。突然のアポイントメントだったにも関わらず、私が海を訪れると穏やかに穏やかを振りかけたような穏やかな波が、ずっと前から約束をしていたように私を迎え入れてくれました。海は私の問いかけに優しく答えてくれ、大学院の制度を細かく説明してくれました。私が掴みどころのないような話をしても、海は優しく波打ち、その不器用さをも受け入れてくれました。そして時にはうんと唸って、私の選択肢を広げようと共に熟考してくれました。先生は、あっいや海、海は寡黙で謎に満ちた存在なので、もしかしたらどのように語りかければよいか戸惑う方もいらっしゃることでしょう。でも、大丈夫です。あなたの中に、母なる海への畏敬の念と、感謝の気持ちさえあれば、どのようなクリーチャーでも受け入れてくれるはずです。
海は広いな大きいな。
海がなぜあんなにも静かで、落ち着きがあるのか知っていますか。それは海が、あなたのあなたらしさをあなた自身で感じることができるようにしてくれているためです。海は肯定や否定はしません。あなたの「信じるもの」を大切にする力を不思議と与えてくれるのです。
海がなぜあんなにも青く、塩の味がするのか知っていますか。私は存じ上げません。さあ、なぜあんなに青いんでしょうね。なんでだろ~なんでだろ~ (by 田中)